恋愛下手な年下研究者の実験体になりました。
25話「甘い約束」
25話「甘い約束」
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「じゃあ、私のところに会いに来たのは、右手の鉱石じゃなくて………。」
「はい。夢さんとの約束を守りたくて。そして、謝りたくて来ました。」
夢は驚いたのと同時に、過去の自分の勘違いが恥ずかしくなった。
理央が紹介したのは、鉱石が好きな人とばかり思っていた。(実際にそうなのだけれど。)まさか、昔に夢を助けようとしてくれた人だとは、夢は思いもしなかった。
律紀が昔の約束をずっと守ろうとしてくれたのは、嬉しくて仕方がなし、とても幸せな事だ。自分が忘れていたのとしても、きっとそれは真実なのだと信じることが出来る。
彼の強い瞳がそれを物語っている。
けれども、何故彼が自分に謝りたいのか。夢はそれがわからなかった。
「謝りたい事って…………?」
「僕と夢さんが話さなければ、夢さんはそのまま帰って事故にあうことはなかったですよね。僕と約束をしてしまったからそうなんだと思ってました。」
「そんな事は……。」
夢がそれを否定するように声を上げたけれど、律紀の話しはまだ続いていた。
この事については、どうにも譲れないことがあるようだった。
「マラカイトの鉱石を夢さんに渡したのも、僕の間違いでした。マラカイトは魔除けの石です。きっと、僕が事故にあうはずだったのに、夢さんに魔除けをあげたから……、僕が遭うはずだった事故を夢さんにが………そう思ってしまって。」
律紀の話は矛盾している。
その事にも気づかずに、律紀はそんな風に思っていたのだろうか。もしかしたら、気づいていたとしても、石のせいにしたかったのかもしれない。
自分の大好きな鉱石をそんな風に思うのは律紀も辛いはずだと、夢は思った。
けれど、目の前で少し前に話していた人が事故にあうというのは、幼い子どもにとってとてもショックな事だったのだろう。
自分のせいだと思っていたのならば、尚更だ。
ずっと彼が悩んできたと思うと、とても切ない気持ちになり、そして同時に忘れてしまっていた事への罪悪感がより一層増してしまった。
けれど、ここで悲しんだ顔を見せたら、律紀はどう思うだろうか。
夢は、そう思って出来る限り微笑んで彼の事を見つめた。
律紀は今すぐにでも泣き出しそうな顔をしていた。