恋愛下手な年下研究者の実験体になりました。
3話「星空の石」





   3話「星空の石」




 丁寧な口調で話をする律紀を、夢は品のある人だなぁと思って話を聞いていた。 
 けれど、よく考えてみると気になることがあった。

 
 「え………あの、理央先輩っていうのは?同じ年じゃないんですか?」
 「あぁ。違うんです。僕が医大にいた時に面倒みてくれたのが理央先輩なんですよ。1年で止めてしまったんですけど、それからも仲良くしてくださってて。」
 「医大に入ったのに止めたのですか?!」
 「はい?自分には合わなかったので、今勤めているところに入りなおしました。」
 

 すごい事をしているにも関わらず、本人はけろっとしており、普通の事のように話していた。


 「でも准教授ってそんなにお若いのに………。」
 「それはたまたまなんです。学生の頃に書いた論文が認められて、いろいろ上手くいったんです。今の経済に自分の研究していたことが合っていただけのことです。」


 苦笑しながら話す律紀。すごい事をしているはずなのに、全く自慢をしているように話さないのだ。
 ただ自分のやって来たことを伝える。それだけの行為のようだった。


 けれど、夢は違っていた。
 目の前にいる人は、自分とは違う。自分の好きなことを見つめて、それを実現している人間なのだ。
 そう感じると、夢は一緒に向かい合ってご飯を食べているのが急に恥ずかしくなってきてしまった。



 
 その後、食事をしながら彼の話しを聞いて過ごした。自分の事を聞かれるのが恥ずかしくて、律紀に質問を繰り返していたのだ。
 彼はそれを優しい口調で丁寧に答えてくれたのだった。
 自分の研究したもので、商品をつくって特許を持っているとか、講義の話とかを聞いて、ますます自分とは世界が違う人だと感じていた。


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