恋愛下手な年下研究者の実験体になりました。
29話「大きな家とこれから」
29話「大きな家とこれから」
夢が目覚めたのは、お昼前の時間だった。
長い時間寝てしまったことに驚きながらも、熟睡している彼を起こさないように、ゆっくりとベットを出た。
冷蔵庫にあった物や以前買ってきた残りで、朝御飯というよりはブランチを作っていた。
すると途中で、「おはようございます。」と、眼鏡をかけ、少し寝癖がついた髪をさすりながら、律紀がキッチンに入ってきた。
「おはよう、律紀くん。キッチン借りてたよ。」
「……朝御飯作ってくれたんですか?」
「うん。お肉とかお魚とかなかったから、簡単な物しか作れなかったんだけとね。もう出来るけど、食べる?」
「はい、いただきます!」
律紀はとても嬉しそうにはにかむと、食器を運ぶのを手伝ってくれた。
リビングに並んで座り、手を合わせて挨拶をする。
ご飯に味噌汁、卵焼きにサラダ、そして果物という簡単な物しか作れなかったが、律紀は嬉しそうに食べ始めた。
「おいしいです!卵焼き、少し甘いんですね。」
「私が甘いの好きで……律紀くんは好きじゃなかった?」
「いえ!そんな事ないですよ。」
そう言いながらも、何故か律紀の声と瞳が震えた。
うるうるしてきた彼の目を見て、夢はビックリしてしまう。
前にも、こんなことがあったな、と夢は思い出しながら、彼の顔を覗き込んだ。