恋愛下手な年下研究者の実験体になりました。
「律紀くん、どうしたの?」
「ごめんなさい!……実はこの家で誰かの手料理を食べるのが夢だったもので。」
「………このおうちで?」
夢は律紀が話している意味がよく理解できずに聞き返してしまう。
すると、律紀は少し顔を歪ませながら、昔の話をしてくれた。
とても寂しそうな顔を見せながら。
「実はこの家は祖母と一緒に住むために僕が建てたんです。」
「お婆様と?それに家を建てるって………。」
「鉱石である物を見つけて発見してから、特許をもらったりしたので、お金には余裕があるので……。それと、僕はおばあちゃんっこだつたんです。」
律紀が外車に乗ったり、豪邸に住んでいるのには理由があったようで、夢は納得してしまった。学生の頃に発見したことは、本当にすごかったのだと知り、夢は改めて目の前の人は鉱石の有名な研究者なのだと知った。
「両親は共働きでしたし、厳しい人だったので優しい祖母だけが、僕の理解者でした。僕は両親に医師になるように言われ続けていましたけど、祖母だけは反対してくれてました。好きなことをやるべきだと。」
「そうだったのね……。」
「…………けれど、僕の両親は事故であっけなく死んでしまって。それで、祖母も悲しんで老け込んでしまったんです。」
律紀の両親についての話を夢は初めてて聞いたので驚いてしまった。
身近な人を一気に2人も亡くして、律紀も律紀の祖母もきっと悲しんだだろう。
それでも、律紀は自分よりも祖母を心配したようだった。
「それが大学に入学が決まった頃だったので、僕は1年だけ医大に通い、僕の兄が父と母の仕事を受け継ぎました。なので、僕は医師を止めて大学に入り直したんです。そして、一人になってしまった祖母と一緒に暮らして行こうと思ったんです。」
そう言うと、律紀は苦い顔をしながらも、笑顔をつくって夢を見つめた。
その表情はとても苦しそうに、見ている夢が切ない気持ちになった。
「けれど、家が完成する目前に祖母は病気てで亡くなってしまって。……どんな家にしようかとか、新しいキッチンで何を食べようかとか話していたので。……夢さんの料理を食べると、祖母のことを思い出してしまって、いつもうるっときてしまいました。不思議ですね。」
「そうだったんだ………。そのためにおうちを作ったんだね。律紀くんは優しいね。そして、おばあちゃんが本当に好きだったんだね……。」
「はい。大切でした。だから恩返ししたかったんですけどね。あ、でも、1つだけ嬉しい報告が出来そうです。」