恋愛下手な年下研究者の実験体になりました。
先ほどまでシュンとしていた律紀だったが、何かを思い出した瞬間。目をキラキラさせてニコニコしながら夢を見ていた。
「嬉しい報告?」
「はい!彼女が出来たら、ここに連れてくると約束したんです。」
「じゃあ、見ていてくれてるかな?」
「ええ、きっと。それに結婚式も楽しみにしてたんですよ。」
「え………。」
思いもしない言葉が出てきて、夢はドキッとしてしまう。
恋人なったばかりの彼から「結婚」という言葉が出てくるのは、女としてはかなりドキドキしてしまうだろう。
彼の結婚なんて、夢のように幸せな事だろうけれど、やはり今は全く現実味がなかった。
だが、律紀が想像する未来に自分がいるのかもしれない。
それだけでも、今は十分に幸せだと夢は思った。
「今は、年下で頼りないかもしれないけど、絶対に夢さんに追い付いて、一緒に歩いても恥ずかしくないように頑張りますね。いつか、結婚してもらえるように。」
「それ、私の台詞だよ。律紀くんにふさわしい彼女になれるように頑張るね。」
「違いますよ。」
「え?」
律紀はそう言うと、温かい両手で夢の輪郭を包むように触れると、鼻と鼻が触れそうになるぐらい近い距離まで近づいてきた。
そして、夢が大好きな優しくて、安心できる律紀の笑顔を見せながら、囁くように呟いた。
「もうふさわしい彼女なんですから、僕のお嫁さんになれるように、です。」
「………そう、だね。」
「僕にとってもう十分すぎるぐらいなので……早く僕だけのお嫁さんになって欲しいです。」
目を細めながら律紀は少し照れた顔で、夢にそう言い、優しく唇を落とした。
彼に触れられていると、いつかあの日の記憶が戻ってくるような気がした。
あの日から会えずにいた分、いや、それ以上に彼とずっと過ごしていこう。
彼の優しい笑顔を見つめながら、夢はそう強く思った。