恋愛下手な年下研究者の実験体になりました。
「夢さん、少し待っててください。」
「うん?」
律紀はそういうと、リビングから出て行った。何か用事かな?と思いながら、夢は少し気分転換をしようと窓辺に近寄った。
窓の近くはやはり外気を感じやすくなるため、ひんやりとした空気になっていた。
今夜は晴れている。そのため、月がとても綺麗に見えて月明かりも感じられるほどだった。満月ではない、少しかけた月だけれど、とても綺麗だった。
「お待たせしました。」
「あ、律紀くん、どうしたの?………それって、スケッチブック?」
戻ってきた律紀が持っていたのはスケッチブックだった。
古びて色が抜けている部分もあるけれど、とても大切にされていたのか汚れたり折れたりはしていなかった。
「夢さんに見せたくて。」
「………もしかして、これって。」
夢は律紀が持っている物がなんなのか、すぐにわかった。
律紀から受け取り、スケッチブックをぱらぱらと捲ると、幼い子どもが描いたのであろう絵が何ページも続いていた。
どのページも鉱石が描いてあり、その下に何の鉱石を描いたのかのメモも残っていた。
色鉛筆で描かれた色とりどりの鉱石の中には、マラカイトと琥珀もあり、下手だけれども味があるように夢は感じた。
「これ私が律紀くんに渡したって言うスケッチブックだよね?」
「はい。とっても可愛らしくて、綺麗な絵本で僕が1番好きな本です。」
「えー、こんなに下手なのに?」
「そんな事ないですよ。とっても魅力的です。大切に描いてるのが伝わるので。」
律紀はそういうと、腕を夢の腰にまわして、優しく引き寄せて、夢の前髪をかきあげると額にキスをしてくれる。
律紀はこうやって夢を甘やかしてくれるのがとても上手になり、夢はいつも彼にドキドキするようになった。
純粋な行動だからこそ、律紀のしてくる事すべてに翻弄されつつも愛しくなってしまう。