恋愛下手な年下研究者の実験体になりました。
「夢さんの方こそ、大丈夫?元気ないみたいだけど……。」
「そんな事……。」
「ないとは言わせないよ。好きな鉱石も見ないで考え事してるし、今もボーッとしてた。」
「それは……………。」
彼が自分の事をよく見ており、気にかけてくれていた。それが嬉しいのに、夢は何と答えていいのか迷ってしまった。
「本当は鉱石削るのイヤだった?大切な物みたいだったし…。」
律紀は、テーブルの上に置かれた夢の右手から、自分の両手を離した。先程まで彼の熱があった夢の右手から温かさが消えてしまって、夢は少し寂しくなってしまう。
「削るのがイヤとかではないよ。」
「じゃあ、どうしたの?………僕には話せないこと?」
律紀の言葉は、「契約の恋人だから話せない?」。そう聞いているようだった。
律紀は研究のために真剣に鉱石の事を知りたいと思っている。
それなのに、夢は恋人ごっこの事ばかり考えてしまっているのだ。もっと恋人らしいことをして欲しいだなんて、彼に伝えたどんな風に思うだろうか?
そんな下らない理由で悩んでいたのかと思われないだろうか。
夢は元々考えすぎた所が多いと自覚していたけれど、律紀に会ってからは今まで以上に弱気になってしまっているような気がした。
「そういう訳では。」
「………笑ったり、怒ったり、バカにしたりなんてしないって約束するから。夢さんがそんなに悲しんでる理由を教えて欲しいんだ。」
夢を安心させようと、ニッコリと笑う。
夢が心配している事をわかっているかのように、優しい言葉をかけてくれる律紀。
本当に自分より年下なのだろうかと思うぐらいに、彼はよく気持ちをわかってくれていた。