恋愛下手な年下研究者の実験体になりました。
「律紀くん。この車、新しいよね?新車の匂い賀する。」
「あぁ……そうなんだ。よくわかったね………。理央先輩に選んで貰ったんだ。」
「理央さんと?」
「そう。理央先輩は車に詳しくて。本当は小さい車とか軽自動車でもよかったんだけど、かっこつかないからってこれを勧められたんだ。」
理央と律紀が、車を一緒に選ぶほど仲がいいとは、夢は知らなかった。
理央は医者なので高級車を買えるのがわかるけれど、律紀はまだ大学を出たばかりだ。
やはり学生の頃の研究とやらがすごいのだろうなーと夢は思った。
夢が選んだ映画は、公開日から日が過ぎていたのと、休みの日の午前中だった事もあり、席はとても空いていた。そのため、後ろの方の見やすい中央席を2つ予約していた。
先に夢がお金を払っておいたと知ると、「ありがとう。じゃあ、お昼は僕が払います。」と、お礼まで言ってくれる。
研究室ではあんなにも慣れていない様子だったのに、今日の律紀はどこか違っていた。
映画はハッピーエンドの恋愛ものだった。
夢は原作の小説も読んでおり、主人公の彼氏がとても男らしくてかっこよく、頼りがいがある魅力的な男性だったのを覚えていた。彼女である主人公を優しくそして、ドキドキするような事をしてくれるけれど、ダメな事はしっかりと叱ってくれる。
夢の憧れと言ってもいい性格だったので、律紀にも見せたいと思ったのだ。
この映画を見れば、恋人らしさというのを少しはわかってくれるだろうと、夢は考えた。
男の人が恋愛ものの物語をあまり観ないのを知っていたので、律紀も嫌がるかと心配していたけれど、彼は「わかりました。一緒にみましょう。」と言ってくれたのだ。