恋愛下手な年下研究者の実験体になりました。
「律紀くんに、恋人っぽいことして欲しいって私の我が儘を叶えてもらうわけだし、私も律紀くんがどんな事が好きなのか、わかるように頑張るね。」
「夢さん、そのままで大丈夫だよ。………そのままでいて欲しい、かな。」
「え?」
「それより、夢さんはあの映画みたいな話とか、恋愛が好きなの?」
急に話題を変えられてしまい、夢は少し戸惑いつつも彼の話しに合わせた。
何か話しにくい事や、嫌なことがあったのだろうか?と、夢は不安になりながらも彼が普段通りの様子なのを疑問に思っていた。
「そうだね。好きだと思う。原作の小説ではもっといい場面がたくさんあったし。」
「ふーん………夢さんって、恋愛小説とか好きなんだね。」
「うん………こんな歳なのに、恥ずかしいかもしれないけど。」
28歳になれば、アラサーと呼ばれる。
結婚している人も多いし、未来を見据えて真剣に恋愛をしている女性も多い年頃だろう。
それなのに、夢は小説や漫画の恋愛に憧れて、現実では契約の恋人までいる。
きっと、同年代の女性から見たら、「何をやっているのだろう。」と思われてしまいそうだった。
だからこそ、こんな夢見がちな事を言うのは恥ずかしかった。
「恥ずかしいの?好きなんだからしょうがないんじゃないかな。僕なんて、鉱石ばっかり見てきたし。でも、楽しいから仕方がない、ですよね?」
「………そうだね。」
やはり律紀は大人だ。
周りに流されない自分のこだわりをしっかりと持っていて、自信もある。
そんな律紀が夢はとても眩しく見えた。
「夢さんの好きなこと、いろいろ教えて欲しいな。あ、もちろん、僕も考えますけど。でも、知っておきたいなと思って。」
「教えるのは恥ずかしいけど……でも、伝えるね。だから、怖がらないでやってみて。……その……。」
「夢さん?」
「本当の恋人じゃないんだし。私、怒らないから。」
律紀の気持ちが嬉しいし、これから彼がどんな事を考えて、何をしてくれるのか。
それが楽しみでドキドキしているはずなのに。
自分が言った言葉で、自らを傷つけてしまい、最後は律紀の前で笑えたのか、夢はわからなかった。