恋愛下手な年下研究者の実験体になりました。



 そんな日の昼休み。
 律紀からメッセージが届いていた。
 今日は朝の挨拶だけでやり取りは終わっていたはずなので、不思議に思いながら、メッセージを開いた。

 そこには『今日の約束なんだけど、僕が熱を出してしまったので、キャンセルさせてください。すみません。』そう書かれていた。


 「律紀くん、熱か……。大丈夫かな。」

 
 自分のデスクで手作りの弁当を食べながら、夢はメッセージを見つめた。
 律紀は前に会った時に大学の入試があって大変だと言ってた。それに、研究の仕事もあるだろうし、講義だって受け持っているはずだ。
 考えるだけで多忙なのがわかった。

 それに彼は一人暮らしのはずだ。熱が出ているのならば、きっと食事の準備さえ辛いだろう。それを考えると、夢は居ても立ってもいられなくなった。


 寝ているかもしれない。そんな事を考えたけれども、不安の方が勝ってしまい夢はすぐに律紀に電話をした。
 すると、彼はすぐに電話に出てくれた。


 『はい。………夢さん?』
 「お休み中にごめんね。メッセージ見たけど大丈夫?」
 『大丈夫です。今、講義を終わらせたところなので……。』
 「え!?仕事してたの?」
 『はい。休講にしてしまうと、生徒にも申し訳ないので講義だけやろうと思って。』
 「………そんな。無理しなくていいのに。体調は大丈夫?」
 『くらくらするかな。……熱が上がってきてるのかな。』


 いつもより覇気がなく、話し方もゆったりとして弱々しかった。
 夢はますます心配になってしまう。


 「律紀くん。運転も心配だから今日はタクシーで帰ってね。」
 『え、そんなに酷くは……。』
 「ダメです。それと、夕飯作りたいんだけど……おうちに行っちゃだめかな。あの、恋人として……。」
 『え………。』


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