恋愛下手な年下研究者の実験体になりました。


 そして、今日は前に話しをした実験をする日だった。

 夢の右手の鉱石は太陽光や紫外線を浴びることで光るのではないか、と律紀は考えていた。 そのため、今日は並べく右手の鉱石を太陽に当ててみることにした。
 仕事をしている平日だとどうしても太陽の光を浴びる事が出来ないので、その日は休日に律紀と会う事になっていた。

 外を歩いてデートをしながら実験をするのだ。
 彼との契約恋人としてのデートは、何回かあった。仕事終わりに食事に行くぐらいがおおかったので、1日となると映画の日以来だった。


 「寒くないですか?」


 太陽の光を当てるには寒い中、外にいなければならない。
 そして、右手だけは手袋も出来ないのだ。
 2月という冬本番の気候では辛いものがあったけれど、夢はそんな事は気にしていなかった。

 律紀とのデートが嬉しいのもある。それにプラスして大切にしていた右手の鉱石の事がわかるかもしれないのだ。
 その期待感と興奮で体温が上昇しているのか、夢はあまり寒さを感じてはいなかった。


 「うん。大丈夫だよ!左腕には、ホッカイロ貼って来たから。」


 律紀は心配そうに左腕を見つめていたので、夢は淡い水色のコートの上から手で左腕を擦った。
 その話を聞いて安心したのか、律紀はホッした表情を浮かべた。

 律紀は茶色のチェスターコートに、黒とグレーのチェックのマフラー、そしてカーキ色のセーターと黒のスボンという服装だった。
 背も高くスラリとしているし、知的な雰囲気が眼鏡をする事で更に増している。
 出会った時から全体が整った人だと思っていたけれど、やはり今見てもその通りだと夢は思った。
 先程から、ちらちらと彼を見る女性の姿を夢は目撃していた。


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