恋愛下手な年下研究者の実験体になりました。
恥ずかしげもなく言う彼に対して、夢はその言葉を聞いただけで、ドキドキしてしまう。
腕を組んだときは照れていたのに、間接キスは平気なのだろうか?
「恥ずかしいけど、いただきます。」
「ど、どーぞ。」
そんな事を言いながらも、律紀はいつも通りの笑顔で、夢のチャイティーラテを一口飲んだ。
夢は心の中で「あー……間接キスしちゃってるよぉ。」と、動揺しながらも必死に顔に出さないように冷静を装っていた。
「ん……なんか、刺激的な味ですね。」
律紀は少し苦い顔をしていた。香辛料が合う合わないがあるので、この飲み物は好き嫌いが分かれるのを夢は知っていた。
律紀はあまり好みではなかったようだ。
「おいしいんだけどなぁー。」
夢は、チャイティーラテを受け取って、じっとカップを見つめる。
20歳後半になっても、こんな事でドキドキしてしまってはダメだ、と思いながらも視線は飲み口へと言ってしまう。
夢は緊張した顔でチャイティーラテを一口飲み、そんな姿を律紀は微笑みながら見守っていたのだった。
夕日が出てきた頃に、近くのスーパーで食材を買い、律紀の家へとお邪魔した。
重い荷物は律紀が持ってくれた。
「何もない場所ですけど、どうぞ。」
「お邪魔します。」
律紀の家に入ると、ほんのりと温かく、そして石の香りがする。夢はほっと安心して、軽く息を吐いた。
自分の家ではないし、本当の恋人ではない人の部屋なのに、安心するのはおかしな事かもしれない。
けへど、夢は少し寂しげだけれども律紀らしい家の雰囲気が好きだった。
律紀は玄関に荷物を置き、「あ、そういえば……。」と何か思い出したように呟いていた。
夢も靴を脱ごうと身を下げようとした。