恋愛下手な年下研究者の実験体になりました。
律紀の提案で、夢が食事を作る前に鉱石の光を見てみようという事になった。
きっと、夢があまりにも楽しみにしているのを見て、彼がそう言ってくれたのだろう。
先ほどまで夕日で赤く染まっていたカーテンも、今はまったく光がなく、外が真っ暗になったのがよくわかった。
あとは部屋の照明を消すだけ。のはずだったけれど、律紀が「準備しますね。」といって、隣の部屋に行ってしまった。
何を準備するのか?
夢はリビングの黒革のソファに座って、律紀を待とうとした。
けれど、なかなか彼が帰ってこないので、夢は台所へ行って買ってきたばかりのコーヒーを淹れていた。
「ごめん!お待たせしました。」
「ううん。ちょうどコーヒー淹れたところ。………すごい荷物だね。それに水晶も。」
夢がコーヒーを淹れたカップをリビングに持っていくと、ちょうど律紀が奥の部屋から出てきた。手には大きな箱と、鉱石が沢山あった。
夢でもわかる、透明の鉱石。水晶が多かった。
「これは、ただの水晶たちじゃないんだ。すぐ終わるのでセットするね。」
「うん。」
夢はコーヒーを飲みながら、彼が楽しそうに何かを準備するのを見守った。
彼はとても楽しそうに、ひとりだったら鼻歌を歌っていそうなぐらいにニコニコしていた。
「じゃあ、準備出来たので、電気消しますよ。」
「うん。」
律紀が照明のリモコンを持ったので、夢は右の掌を隠すように左手で包んで隠した。
そして、律紀が電気を消し、薄暗い彼がワクワクした顔で夢の右手を見ているのを確認しながら夢は、左手を離した。