恋愛下手な年下研究者の実験体になりました。



 「これって、私の右手にあるのと同じ?」
 「そうだね。似てるね。」
 「このサイトによると、大量に見つかっているそうで、お金を払えば採掘可能みたいです。」
 「そうか…………じゃあ、アメリカに行ってみるか。」
 

 その言葉を聞いて夢は、驚いて声が出ず、その場で固まってしまった。
 けれども、すぐそばの望月は嬉しそうに、「はい!」と返事をしている。
 自分が発見した事が手柄だったと、喜んでいるのがよくわかる。律紀の役に立って嬉しいのだろう。


 「大学は大丈夫なんですか?」
 「講義は…………あとは試験ぐらいだから、なんとかなるだろう。他の教授にお願いするよ。研究優先にしてもいいという、条件だったしな。」
 「また、大学を困らせるのですね。」
 「仕方がないさ………。夢さん、すみません。今から大学の方に話をつけてくるので、今回はこれで。」
 「………はい。」
 「同じ鉱石見つかってよかったですね。これで、詳しくわかりそうですよ。」


 夢を置いて、律紀と望月の話しはどんどんと、進んでいく。
 夢はただその会話を聞いているしか出来なった。
 頭の中には、自分の鉱石と同じ物が見つかったという事は………。それを考えては、焦りと、不安が夢を襲った。

 律紀は慌ただしくなったことを、夢に謝罪して、忙しく研究室を出ていった。その、表情には大変そうであったけれど、どこか嬉しそうだった。




 夢と律紀を繋いでいた、右手の光る鉱石。
 それがなくなってしまう事だけを、不安に思っていた。
 けれど、他に同じ鉱石が見つかったという事は、それを律紀が手に入れてしまったら、彼は夢に会う必要もなくなってしまうのだ。
 それに契約彼女も、彼が鉱石の研究をしないのであれば、なくなってしまう。

 同じ鉱石が見つかった喜びよりも先に、彼との別れが頭をよぎり、夢は体が震えた。


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