恋愛下手な年下研究者の実験体になりました。



 夢が最後に律紀と会ってから約10日が経った。お互いに忙しかったため、会うのが遅くなってしまった。
 もう3月になり、少しずつ春の話題が多くなってきた頃、やっと夢は律紀に会うことが出来た。


 「夢さん、お久しぶりです。お元気でしたか?」
 「お久しぶりです。えぇ……律紀さんは、忙しそう、みたいですね。」
 

 夢はいつもの研究室よりも物が整理されてない状態や、律紀が少し疲れた顔をしているのをみて、そんな風に思った。
 するの、律紀は苦笑しながら「すみません……。」と謝った。

 そして以前と違う敬語での会話。
 それだけでも、夢は胸がチクリと痛んだ。


 「アメリカに行く前に仕事を片付けなきゃいけなかったので。」
 「アメリカにはいつ行くんですか?」
 「今日の夜ですよ。」
 「今日………そっか、間に合いましたね。」


 夢はほっとして小さく息を吐いた。
 そして、律紀が本題を話す前に、夢から話を切り出した。
 もし、彼から実験の事、そして契約恋人をやめようと言われたら、いくら覚悟をしていたとしても、律紀の前で泣いてしまうと、夢は思ったのだ。
 
 
 夢は、泣かないように必死に耐えながら、律紀を見つめた。
 いつもニコニコしている彼だったけれど、夢の妙な雰囲気を察知したのが今は、心配そうに夢を見ていた。


 「アメリカに行く前に、律紀さんに渡しておきたい物があるんです。」
 「夢さん………。」


 夢は、鞄の中に大切に入れていたもの。白いハンカチに包んでいたものを取り出して。
 夢は、テーブルの上に置いた。
 そこにあるのは、見た目はどこにでもある、道端に落ちているような小石だった。


 「これは、もしかして……!」
  

 律紀は一目みて、それが何かを理解したのか、すぐに顔をあげて驚いた顔で夢を見ていた。


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