恋愛下手な年下研究者の実験体になりました。
「律紀を見る限り、あいつがイヤイヤやっていた事ではなかったよ。もしそうだとしたら、俺も夢さんを止めていたし、今も怒っていたかもしれない。それにね……。」
夢の右手を指差してながら、理央はニッコリと微笑んだ。
「想い人の事だって律紀から直接聞いたわけじゃないんでしょ?君の気持ちをちゃんと伝えて、彼の話も聞いてみるのもいいんじゃないかな。」
「…………話してくれるでしょうか?」
「きっとね。」
1度は終わったと思っていた恋。
自分の気持ちを伝えて、もしダメだったとしてももう1度泣けばいいだけだろう。
それに律紀に謝るのは人に任せてはいけない事だと、夢は気づいた。
「………私、もう1度律紀くんに会ってみます!………でも、彼は今アメリカなので少し先になりそうですけど。」
夢は自分で決めたことを、理央に宣言する。
すると彼はうんうんと頷いてくれた。
先ほどの告白は、夢の気持ちを知りたかったのと夢自身に気づいて欲しかったから言ったのだろう。
年上の余裕を見せて、嬉しそうに微笑む理央を見て、夢は「理央さんも、本当に律紀くんが好きなんですね。」と言うと、彼はハハハッと笑った。
「そうだね。僕も彼が好きだよ。……じゃあ、好き者同士という事で夢さんに1つ耳よりな情報を教えてあげよう。」
理央は、夢の頭をポンポンッと撫でながらそう言うと、得意気な顔で夢を見た。
そして、何でも知っているかのような、ニヤリとした微笑みを見せた。
「律紀はアメリカには行ってないよ。」
その言葉を聞いた瞬間、夢は思わず椅子から立ち上がり大きな声を出してしまった。
夢は、理央の言葉は、魔法のように自分を驚かせてばかりだなぁと思った。