恋愛下手な年下研究者の実験体になりました。
19話「涙の再会」
19話「涙の再会」
律紀がアメリカに行っていない。
それはどういう事だろうか………?
夢は目の前にいる医師である理央の次の言葉を待っていた。
けれど、彼はニコニコしたまま夢の焦っている顔を見つめ続けていた。
「あの……理央さん。それで律紀くんは……?」
「気になる?」
「はい!」
「………んー、それは内緒。」
「………理央さん、実は意地悪ですか?」
まさかの言葉に、夢は唖然とした顔を見せながら彼を見つめた。
理央は本当に考えが掴めない人だと、夢は思った。
「あ、僕が告白したからって……言うようになったね。」
「………それだって冗談ですよね?」
「そんな事ないよ。」
「…………律紀くんの居場所、教えてくれないんですか?」
夢はため息をつきながら、理央を問い詰めた。けれど、理央は困った様子が全くなく、ニヘラと笑っている。
「律紀が君に話してないことを、俺から言うのはおかしいかなって思ってね。だから、内緒。でも、きっと連絡はつく場所なはずだから、夢さんから連絡してみて。」
「……そうですね。」
いつもニコニコして、先ほどの冗談のような事ばかり言う理央だけれど、彼自身の考えや律紀の事をよく思っているのだと、夢は感じていた。
理央の病院を出た後、スマホを確認する。
すると思いもよらない人から電話がかかってきていた。
「あれ、お母さん?」
不在着信の相手は、夢の母親だった。
夢が今住んでいる所とは離れた場所に住んでいる。夢が数年に1度しか帰らないので、母親と夢はなかなか会う機会がなくなっていた。
それに母親は電話が苦手で、スマホも持っていなかったので、電話がかかってくる事は稀であった。