恋愛下手な年下研究者の実験体になりました。
「いえ、すみません。拝見します。」
優しく夢の手に触れた瞬間。
「っっ!!」
あまりに彼の指先が冷たかったので、夢は体をビクつかせてしまった。
それに、彼も驚き「す、すみません!」と、せっかく伸ばした手を引っ込めてしまった。
「ご、ごめんなさい。あまりにも手が冷たすぎて。もしかして、結構長い時間、外で待っててくれましたか?」
「あ………、はい。あなたの仕事がどれぐらいに終わるかわからなかったもので。……15時ぐらいから。」
「えっっ!3時間も外で待ってたんですか?!」
「………すみません。」
今は18時過ぎで、とっぷり日が暮れている。
普通でも3時間も待っているのは辛いというのに、この真冬に外で待っているのは、相当過酷だっただろう。
よく見れば眼鏡の男性の唇は、真っ青になっており、体も少し震えていた。
この目の前の男性と夢は待ち合わせしていたわけではない。けれども、自分を待っていてこうなってしまったと知ってしまったら、夢は申し訳ない気持ちになってしまった。
夢は彼の腕を掴んで、ずんずんと歩き始めた。
「あ、あの……、どうしたんですか?」
「そんな冷えきった体でいたら風邪ひいてしまちますよ?まずは、暖かいところに行きましょう。」
「僕は大丈夫なので……。」
「だめです。私も寒いの苦手なので、ついてきてください。」
彼は納得いかない様子だったけれど、夢が後ろを振り返りながらそう言うと、渋々ついてきてくれた。
夢は自分でも、初めて会った人なのに何で手を掴んで一緒に歩いているんだろう?と不思議に思ってしまった。けれど、繋いだ腕から氷のように冷たくなっていた。彼を放っておけない。そう思ってしまうのだ。