恋愛下手な年下研究者の実験体になりました。
律紀はアメリカ行きをキャンセルした。
本当は、望月も行きたいと言っていたけれど、試験があるのでそれを止めていた。
彼女が一緒じゃなくてよかったと安心しながら、律紀は研究室に籠っていた。
武藤からある鉱石を引き取った次の日。
仕事以外は、それを調べるのに没頭していた。
調べたからといって、何になるわけでもない。彼女が喜ぶはずもない。
けれども、律紀は調べるしか出来なかった。
律紀には、女の子を喜ばせる方法よりも鉱石の事を必死に学んできていたのだ。
それしか出来ない自分が情けないけれど、今は出来ることをやろうと思っていた。
「こんな時間か……。あ、雪か。」
気づくと、もう夜になっており空腹も感じめる時間になっていた。
窓の外を見ると、小雪が待っていた。
積もるほどでもない雪だったが、律紀はすぐに帰る事にした。
いつもだったならば、深夜までここに留まり、泊まることだってあった。
けれど、何故か今は帰った方がいい、そう思ったのだ。
律紀はすぐに調べていた鉱石と夢の右手に入ってきた小さな鉱石を大切に布に包んでから持ち帰る事にした。
車を運転している間も何故か律紀は落ち着かなかった。
こういうのは虫の知らせというのだろうか。悪いことが起きる前に、帰らなければ。そう思った。
危険がないよういつもより安全運転で帰り、寄り道もせずに自宅についた。
すると、家の前に誰かが立っているのがわかった。
誰だろうか?ゆっくりと近づいていき、雪の中、白い顔をして立っているのが誰かわかった瞬間、律紀はドキリとした。
数日前に泣かせてしまった、大切な人がそこに居たのだ。