恋愛下手な年下研究者の実験体になりました。


 
 その気持ちは止められるはずもなかった。
 夢は、天照石の温かさを感じながら、律紀を見上げた。
 緊張で、口はカラカラするし、目は潤んできてしまう。お風呂上がりの火照って体が、また熱を上げたように、頬が更に赤く染まった。



 「律紀くんが好きです。」
 「………え……。」


 律紀の顔を見つめているうちに、ずっと隠してきた言葉が溢れでてしまった。
 彼の驚いた顔が目に入ったけれど、夢はそれを見ても言葉を止めることが出来なかった。


 「契約の恋人なんて事をお願いしたり、それを自分で止めたりして、自分でもバカな事ばっかりしてると思うんだけど……。年上なのに、幼いなって。………けど、本当は律紀くんと一緒に居たかった。側に居たくて、契約恋人をしたり、実験を了承したの。律紀くんには想ってる人がいるのはわかってるんだけど………好きって気持ちは止められなかったの……。」
 「夢さん………。」

 
 律紀は夢の顔を見つめ、そしてゆっくりと手を伸ばすと温かい指先で、夢の顔に触れた。
 指で夢の目元にあった涙を拭ってくれる。
 それで、夢は初めて自分が泣いていたのだと知った。

 
 「あれ……なんで泣いて……ごめんなさい。」
 「……僕は夢さんの事を泣かせてばかりですね。」
 「そんなことないよ。律紀くんが好きだから、私が泣いてしまってるだけ。」
 

 夢がそう言うと、律紀は悲しそうな顔で夢を見つめた。
 そして、夢の右手を両手で持ち、ガーゼが当てられている傷口を優しく包んだ。


 「夢さん、さっきの言葉を今から僕が話す事を全部聞いてから、よく考えてほしいんです。」
 「………私は何を聞いても律紀くんが……。」
 「僕が聞いて欲しいんです。」


 律紀が首を横に振って、優しく微笑みながらそう言った。
 大好きな彼にそう頼まれてしまっては、夢も嫌だと言えるはずもなかった。
 それに彼から話を聞きたかったのも事実だった。


 どうしてアメリカに行かなかったのか。
 そして、武藤夫妻との取引は?そして、昔の事故の事について。

 夢は、律紀の事を知りたいと思った。



 「私も律紀くんに聞きたいこと沢山あるよ。だから、話して欲しい。」
 「………ありがとうございます。」


 夢は、彼の優しい笑顔につられるように、微笑んでいた。
 彼の雰囲気が穏やかになり、そして、緊張感がなくなってきたことに、夢は少しだけホッした。




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