水瀬くんは浮気をする生き物です
心配、だなんて。
ついさっきまで挨拶すら交わしたことなかった私相手に、そんな夢みたいなこと…
…いや、もしかして本当に夢かも?
「ほら、行くよ」
「っひゃあ!?」
信じられなくてほっぺたをつねって確認しようと持ち上げた私の手は、水瀬くんの手のひらにサッと阻まれてしまい、それを実行することはできなかった。
「あっ、あああああの!!」
「ん?」
「手…!」
「うん。また転ばせると危ないから」
大きくて骨ばった男の子の手。
水瀬くんの、手。
私の手を包み込んだままぐっと引いて歩いていくリアルな感触に、これが夢じゃないことを教えられる。