だれか私を愛してください
朝起きるとそこに母がいた。
目を疑った。仕事のはずなのに。
自分のブランドのスーツを着こなし化粧をしている。
朝食を作り母の前にだして自分も食べ始めた
何かを言うこともなく食べ始めた。
食べ終わって制服に着替えるため部屋に戻った。
新しい制服。
赤いリボンが胸元で揺れる。
スカートも赤のチェック。
ブレザーのワンポイントも気に入っている。
カーディガンも。セーターもベストも靴下もローファーもカバンも。
全部全部大好きで気に入っていた。
下に降りると
「行くわよ。」
と母に言われた。
「え。どこに...。」
「はぁ。どこにってあんたの学校。」
母一緒に来てくれる。
それだけで笑顔になった。
車の中でも普段あまり会話をしない母。
今日は違っていた。
「制服。似合ってるじゃない。」
思いがけない母の言葉に嬉しくなって顔が赤くなった。
「あ。ありがと..」
「それ。私のブランドの制服なの。私がデザインしたのよ。」
全然知らなかった。私の母が。
すごく誇らしかった。
「ついたわよ。」
「ありがとう。」
コツコツヒールの音を鳴らしながら歩いていく母の背中を追いかけた。
学校の中には先生がいっぱいいた。
「おめでとうございます。」
すこし照れながら歩く私の前を母は堂々と歩いていく。
体育館にはクラスごとに分けられた席に座るようにという指示があったので自分のクラスを探しに行った。
もちろん同じ中学校の子なんてひとりもいないからドキドキもしなかった。
3組。
通路のど真ん中だった。
前から19番目。
母と椅子に腰をかけた。
周りでは同じ学校だったであろう子達がグループを組んでワイワイする人がいたり母に制服姿を撮影されている子もいたり。
一人でいる子は少なかった。