夢の世界でキミと、待ち合わせ。
だとしても、せっかくの校外学習なのに。
『夢野ん家ってどの辺?学校から近いとは聞いたんだけど担任に』
げっ。担任ってば、ペラペラ人の個人情報喋りやがって。
まあ、多分聞いてきたのがイケメンだったからだろうな。
イケメンの頼みは断らなそうだし、あの担任。
『うん。まーそうだよ。
学校から1番近いコンビニの近くに住んでる』
『そのコンビニの真隣って薬局ある?』
『うん。あるよ。』
『やっぱり!!じゃあ、今から看病行くねん!』
……え、来るの?
……侑李くんが?
まじ…で?
放心状態でいると咲良から1件の通知が。
『胡桃〜、多分100%の確率で侑李がそっち向かったと思うんだけど、
突き返さずに、黙って侑李に看病されてて。
お願い〜』
と。
ぇぇぇぇ、咲良さん…それは……
『分かった…
少し看病してもらったら帰らせる』
と、送ってベッドからおり下に向かった。
ーガチャ
リビングを開けて見るけど、
いつもと変わらない殺風景。
本当に人間が住んでるの?って思わせるくらい家具のない家。
キッチン近くには、テーブルと椅子が置いてあるけれどそれは1度も使ったことさえなかった。
父親が死んでもう何年月日が流れたのだろう。
…母親が、若い男と夜逃げして何年月日が経ったのだろう。
母親は父親が死んで直後は放心状態だったって言うのにほんの1年弱で直ぐに新しい男を作り、
そのまんまその男と夜逃げして行った。
多分、母親が夜逃げしたのは私が中3になったばかりの頃だと思う。
最初の頃は父親の叔父たちが仕送りとかしてくれたし高校入学金も払ってくれた。
…そして私は、恩返しのために高校入ってすぐに近くのコンビニでバイトを始めた。
もう高一になる前の春休みには採用が決まっていた。