夢の世界でキミと、待ち合わせ。
・夢野胡桃って人
【侑李 side】
俺は、中3の夏に大切な人を失った。
なんで失ったかは覚えていない。
…それに、名前も顔も…何もかも覚えていない。
けれど、1つ覚えているのは、"大切な人"だったってこと。
幼なじみの咲良やその恋人龍斗に聞いても、知らないと答えるばかり。
ーーーそれが、ちょうど高一になる前のお話。
ーざぁぁあっ
キッチンで洗い物をしていた。
今、俺はクラスメイトの夢野胡桃の家にいる。
まあ、その理由は彼女が熱を出したから。
なんでかわかんないけど気づいたら学校を早退してスポドリとか買って、彼女の家に来ていた。
……本当は、身寄りが居ないのは知っていた。
担任に夢野の家を訪ねる時に、担任が
『古谷くん。
…実は夢野さんにはご両親が居ないの』
『…は?』
『夢野さんのお父様は夢野さんが小さい時に亡くなっているの。
そして母親はー……』
担任から聞かされてはいたけど、本人にも確認したら、親はいないと言った。
…マジ、だったんだ。
ずっとずっと…1人で抱え込んでいたんだ。
1人でずっとずっと…寂しい夜を過ごしていたんだ。
ーーーー……
俺が、夢野胡桃に抱いた第一印象は、"他の奴らとは違う世界の人間。"
クラス親睦のグループ決めのときでさえ、自分の席から動かずただぼーっと教卓を見つめていた。