雷王に愛された花
「ミレイ・クリルレイ・ヘレナ様のご到着です。」

やっと、来たか。ずっと待ったんだ。この時を。早く会いたい。顔を見たい。

「そうか。では2時間後に広間で。」

思っていることを全て抑えて、つまらない返事をした俺に、片方の眉を上げたザガンは全部分かっている。

おもしろくて仕方ないような顔をされてムカつくけれどもしょうがない。本当のことだから。

5日前に宰相全員からの承諾書を受け取った俺の顔はにやけきっていたらしい。

その前から俺の伝言通りに家具やドレスの注文をしていたんだから、バレバレだ。

12月の鷹狩で、俺が南部の輩に襲われて行方不明になり、見つかるまでの間、俺の性格に劇的変化が訪れていることも知らずに心配で眠れなかったらしい。

5人の男たちに囲まれて、崖から落ちた時、俺は運よく斜面になっているところを滑り落ちたらしい。もし、あの時崖から真下に落ちていたら、ミレイに見つけてもらえたとしても死体だっただろうな。

国に戻るのが嫌になるほどミレイにはまり、ジルベルトなんかに譲りたくないと思った時には、好きなんだと自分でも認めていた。
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