洗脳されていたことに気付いたので逃げ出してスローライフすることにします。-元魔王四天王の村娘ライフ-
「さっそく命令よ!家を建てるための木材を集めてきてちょうだい!」

私がビシッと指を指して命令すると、『どらご』は、パカッと大きな口を開いて、何度かパクパクさせたかと思うと首を傾げてうなだれた。
どうやら返事をしようとしたらしい。
けど声が出なかったらしいね。
そりゃそうだ。

だって岩だし。
声帯とか、そこまで細かく作り込んでないし。
や、だってとりあえず木材調達のためにやっつけで適当に作ったしね。

『どらご』のような魔力と名付けで作った疑似生命体--使い魔は制作者=主の思考がなんとなく読み取れてしまう。

私のやっつけだの適当だのな思考をおぼろげながらも読み取った『どらご』はあからさまにしゅんとした。
細かい岩が繋がり合った尻尾がだらんと垂れ下がり、巨木の一つや二つ簡単にへし折るぶっとい片足と爪でいじいじと地面にのの字を書き出したのがうっとうしい。

「あ~、その内。うん、役に立ってくれたらちゃんと声出せるように作り直すから」

このままこの巨体にグジグジめそめそされているのもうざいし面倒なのでそう言ってみる。
するとパアッとばかりに『どらご』の顔が明るくなった、と思う。岩だからよくわからんが。

張り切って羽根をバタバタしだした。

「……うぉっ」

ものすごい風圧に私の軽い身体の方が飛ばされそうになる。
慌てて重力魔法を自身に発動。
私の周りだけ重力を1.5倍にした。重い。

『どらご』はといえばふわっ、ともぶわっともしない。岩だし、重いし、羽根は動く飾りみたいなもんでたぶんそれで空は飛べない。

哀愁漂いまくりな魔鉱石と同じ赤い瞳と瞳が合った。
うん、ごめん。
あとでこっちも作り直します。 
ちゃんと仕事してくれたらね。

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