【完】大切な人なんて作っちゃダメだったのに。
「どうして、今なんですか?」
「ずっとね、菜乃花のものには触れることが出来なかったの。さすがに病院を出る時は触ったけど、家に持って帰ったらずっと菜乃花の部屋に入れたまま」
そう、だったのか。
「今年で10年経つし、さすがにダメかなって。菜乃花との最後の会話もいいものじゃなかったの。私たち両親が悪いんだけどね。そういうのもあって怖かった」
それは俺も同じだ。
「だから、読んであげて。封筒は湊くん宛にしかなかったの」
寂しそうな笑顔で話す菜乃花のお母さん。
「わ、かりました。⋯⋯ありがとうございます」
そう言って菜乃花の方にむきなおる。
「また、来るからな」