チャラ王子に捕まりました。
✿Chapter.1✿
完璧王子の水無月くん
ピアノは好きだ。
ピアノを弾いている時だけは、遠慮せずに自分自身をさらけ出せる気がするから…。
一番奥のみんながあまり使わない部屋。
私は放課後になると導かれるように、ここに来てしまう。
長いようで短い夏休みも明け、窓を開けると少し冷たい秋風と光が部屋の中に入ってくる。
そんな空間に…、私の奏でる音が1音1音響き渡っていく。
…あぁ、落ち着くなぁ。
曲も終盤になり最後の1音を弾き終え、手を無意識に膝に置く。
ふぅ、そろそろ帰…。
「いや〜、その曲を最初からフォルテッシモで入るのには驚いたけど、今日も一段と面白かったね!ひなちゃんのピアノ」
突然ドアの方から聞こえた声に、驚きを隠せず身体がビクッと反応する。
恐る恐る振り向くと、ニコッと優しく笑う男の子がドアに背中を預けて立っていた。
「は、晴琉くん…」