チャラ王子に捕まりました。
悪びれる様子もなく、無邪気な笑顔を見せる晴琉くん。
確かにいつまでも人見知りな私も悪いけど、そんな風に不意に笑顔をみせてくる晴琉くんも悪いと思う。
「もしかして、本選っていうのも嘘?」
「あー…いや、それは残念ながら本当だよ。でも今回のは学生だけの音コンだし、別にそこまで緊張はしてないかな。コンクールとか小さい頃からめちゃくちゃ出させられるし、さすがにね」
なんて俯き、ヴァイオリンを見つめる。
小さい頃から……。
私には1位を取る難しさも…
1位を守る大変さも…
分からない。
でも…きっと、たくさん苦労してきたんだと思う。
「…ひなちゃん?」
ぎゅってすることは恥ずかしくてできないけど、これだけは伝えたい。
そう思い、晴琉くんの右手を取ると両手でぎゅっと握る。
…冷たい。
部屋の中はそこまで寒くないはずなのに、繋がれた手からは冷たさが伝わってくる。