クールな彼のニセ彼女


振り向くと、そこにはあちゃーという顔をした中村くんが立っていた。


「やっべー、舜にこれ返すの忘れてた!」


中村達也(なかむらたつや)くん。

彼の手には町田くんの数学の答案用紙が持たれている。
98という赤い数字が見えるから間違いない。

町田くんのことを舜と呼び捨てにしている中村くんは、町田くんと一番仲がいいのだ。


「成川の教科書見て思い出したんだよ!」


いきなりそう話しかけられ、えっとあたふたしてしまうわたし。

だからといって、わたしは男子と関わるのが苦手というわけじゃない。

普段仲良くしている男友達とかはいないけど。

あたふたしてしまった理由は、話題の内容に町田くんが関係しているからだ。

しかもわたしのなかで町田くんと中村くんはコンビになっているので、中村くんと話すのはそういう意味で緊張してしまう。

もちろん、言っちゃわるいがメインは町田くんであって中村くんはおまけのような感じだ。


「舜ってもう帰ったんだっけ?」


ミカコと同じくらいフレンドリーな彼。だからって町田くんが帰ったかどうかなんてわたしに聞かれましても!いや、ちゃんと帰ったところ確認しましたけどねさっき!?


「さ、さっき帰ってたと思うよ?」


そう言うので精一杯だ。

町田くんのことを考えるだけで頬が熱くなる気がする。


「まじかあ…」


どうやら中村くんは町田くんの答案用紙を借りていたようだ。

正解の答案用紙を見て訂正を写すのが一番手っ取り早いもんね。

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