クールな彼のニセ彼女


「まあいっか。訂正するところ1問しかないから、月曜日の朝にできるよな」


中村くんは自己完結したかのようにそう言いながら答案用紙をカバンにしまいはじめた。


えええ?ちょっと待って!


「ま、町田くんならまだ校舎出たあたりにいるんじゃないかな…!?」


わたしに話しかけてきたくせにささくさとなかったことにしようとする中村くんにわたしは思わずそう引きとめた。


だって、答案用紙がなかったら町田くんが困るじゃないか!!

たしかに訂正するところは1問だけかもしれないけど、それでも月曜日の朝に急いでするなんて嫌なはずだ。

中村くんってば町田くんと一番仲がいいからって、勝手すぎだよ!!

わたしごときが勝手に心のなかで怒ってしまった。


「じゃあ悪いけど成川、舜にこの答案用紙届けてくんねえ!?俺、部活あるから急ぐわ!たのむ!サンキュー!」


「えっ…?」


待って、なに、どういうこと?


まるでミカコのごとくピュ~ッと風のように去っていった中村くん。いいや、ミカコ以上。まさに、言い逃げ頼み逃げ。


たのむサンキューって…。なっかむらくーん!!!


わたしの手にヒラヒラと残る、押し付けられた1枚の答案用紙。


そこには確かにつづられている町田舜という名前。


やばい、町田くんが一生懸命解いた答案用紙が、わたしのもとに…!


って感動してる場合じゃなくて!わたしのものではなく町田くんのもので、すぐに彼に返しに行かないといけないんだから!


わたしは急いでカバンを肩にかけ、答案用紙片手に勢いよく教室を飛び出した。

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