クールな彼のニセ彼女


………あれ。

今のわたしまるで、風みたい。


ミカコよりも、中村くんよりも。


風みたいに、走ってる。


町田くんのもとに、はやくたどり着きたくて。


わたしが渡したら、「ありがと」って。

きっとそれだけで終わる。


「どういたしまして」って返事するのが精一杯なんだろうな、わたし。


例えばそこから一緒に帰ろうだなんて、絶対言えない。

わたしにそんな勇気ない。


だけど、偶然舞い降りたこのチャンス。


たった一秒でもかまわない。

町田くんの瞳に、わたしをうつしてほしいの。


「はあ……っ……」


校舎から出て、正門に向かって。


まだ、彼の姿は見つからない。


背が高い彼はだれよりも目立つから、見逃してるなんてことはないはず。


うそ、町田くんどこに行ったの?


そんな遠くまではまだ行っていないはず──


「………………え……?」


次の瞬間、

わたしの視界には、信じられない光景が映しだされた。


正門を抜け、少し歩いた先に、

町田くんと──女の子の、姿が。


……あの子、だれ……?


制服はうちの高校のもの。

だけど、見たことがない顔をしている。

1年か2年生だろうか。


町田くん………彼女、いたの?

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