クールな彼のニセ彼女
「ごめん、巻き込んで」
わたしの手を繋いでいる手のひらが、ぬくもりとともに離れた。
ある意味、ひどく解放感を感じた。
「成川…、聞いてる?」
彼にそう確かめられ、ようやく頭が働きだしたわたし。働かなければならないとなんとか指令を出した。これ以上飲み込まれているわけにはいかない。
「だ、だ、だ、大丈夫…!!」
落ち着け落ち着け成川美保。考えるんだ成川美保。
えっと、さっきのはつまり、女の子を諦めさせるためにわたしが彼女だとあの場しのぎで言った…ということ。そう、つまりそういうことだ。
最低限しか働かない脳みそでそれはわかってはいるんだけど……ああ、だめだ。くらくらする。こんなに近くにあの大好きな町田くんがいるなんて。手を繋がれていたなんて。そもそもわたしの名字覚えてくれていたんだ。ああなんて幸せ。ちゃんとクラスメイトになれていたみたい。
「…もしかして、体調悪い?」
「え、う、ううんっ」
やだ、わたし、そんな変な顔してた?恥ずかしい…!!!