クールな彼のニセ彼女
ほんとのこと言ったほうがいいよね…!?
だって、ここでほんとのこと言わなかったら、わたしと町田くんが付き合ってるって噂になるかもしれない…!
町田くんはリナっていう女の子を諦めさせるためにわたしを彼女だと言ったけれど、クラスのみんなにまで誤解されたらたまったもんじゃないはずだ…!
「も、もしかして、ミカコには言った?」
「うん。教室に行ったら美保ちゃんいなかったから、ミカコちゃんに先に聞いたよ」
なんの悪気もないようにいうアキちゃん。仕方ない。ほんとに悪気はないもんね。
「ほかのだれかに言ったりしてない?」
「うん、ミカコちゃんだけだよ」
それなら安心だ。ミカコには残念だけど、あとで誤解を解いておかなきゃ。
「もしかして秘密だったの?ミカコちゃんも知らないみたいだったし…」
ばつが悪そうな表情を浮かべたアキちゃん。
「えっとね、アキちゃん、実は──」
「でも、リナにはちゃんと付き合ってるって言ってもいいかな?そうしないと…ちょっとあの子危ないから」
本当のことを言おうとしたのに、アキちゃんの言葉にわたしは口が止まった。
「…えっ?」
危ない……?
「ど、どういうこと?」
「なんていうか、ちょっとストーカー気質なところがあるんだよね。中学のときも、いろいろあってさ。彼女持ちには興味ない子だから、町田と美保ちゃんがちゃんと付き合ってて、安心したよ」
心底ほっと胸を撫で下ろしたアキちゃん。そのせいでリナちゃんのはなしが妙にリアルで、背筋が凍る気がした。
だからわたしは、つい──。
「り、リナちゃんにちゃんと伝えてね…っ」
「うん、わかった。他の子には秘密にするからね!じゃあねっ」
アキちゃんはそう言って自分の教室へと戻っていった。