クールな彼のニセ彼女
「…はあ…」
階段をかけのぼり、屋上の手前までやってきた。そこに腰かける。
ため息だって出る。
町田くんはあの場しのぎで言ったことなのに、わたしが真に受けて、なんて思われたらどうしよう…。
もしそうなったら、恥ずかしくて町田くんにもう顔合わせられないよ…。
わたしが町田くんを好きっていう気持ちは、本物なんだけど…。
入学してから、ほかの人に目だってくれていない。
ほんとにほんとに、町田くんだけ。
話したことないくせに、金曜日に話したのが初めてなくせに、自分でも意味わからないくらい、町田くんが好きなんだ──
「…俺と成川、いつから付き合いはじめたんだっけ」
階段の下から、だれかが上がってくるのが聞こえてきた。
だけど、気にしないでいた。きっと別のクラスのだれかがサボりにでも来たんだろうって。
足音が止んで。それと同時にわたしの耳が異様に敏感に反応するあの声がすっと飛んできた。
「っ…!」
信じられない。
顔をあげると──町田くんが目の前に、立っている。そして、壁にもたれかかった。悔しいくらいに、かっこいい。いや、悔やむ意味はなにひとつないんだけど。