クールな彼のニセ彼女


「ま、町田くんあのね、一旦、聞いてほしいんだけど…っ」


わたしは勇気を出して口を開いた。わたしが今日登校してからあった出来事を、順をおって説明するために。


町田くんならきっと、わかってくれる。そう思ったから。町田くんは、クールな男子だけど、すごく心優しい一面を持ち合わせていること、わたし知ってるから──。


「──そ、それで…誤解されてて…っほんとにごめんね…」


はじめて自分から町田くんにこんなに話した気がする。はじめてがこんな誤解を解くための説明だなんて、なんて切ない…。


どうせなら、もっと楽しい話をしたかったよ…。


「…そうなんだ。じゃあ…」


町田くんはゆっくりと口を開いた。


次に続く言葉を、わたしは予測できる。

じゃあ、はやく誤解を解こう。って。そう言うに決まってる。そしたらわたしは「うん」って言って、ミカコやクラスメイトにちゃんと説明して、理解してもらって…。明日から、元通り。わたしと町田くんは、元通り。金曜日の出来事なんて、なかったことになる。町田くんがわたしと手を繋いでくれたこと。町田くんはきっともうすでに覚えていない。わたしが意識してるだけ…。

また、わたしの片思いの時間が、刻々と刻まれていくだけ──


「…成川、俺のこと守ってくれたんだ」


「………………え?」

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