クールな彼のニセ彼女
町田くんは壁にもたれかかっていた体を離して、わたしの真ん前にしゃがみこんだ。
「俺が…付きまとわれないようにしてくれたんだろ?ありがとな」
「…っ」
町田くんの声が、言葉が、あまりに優しくて…わたしは思わず泣きそうになった。
「ま、守るっていうか…そ、そんなたいそうなことじゃ…」
その通りっちゃその通りなんだけど…。だけどそれは相手が町田くんだからだ。町田くんじゃなかったら、こんなことしない。それを伝える勇気までは、今のわたしは持ち合わせていない。
「…もうしばらく、このままでいようか」
「…」
町田くんが言っている意味が、わたしには理解できなかった。
頭のいい町田くんはやっぱり難しい言葉を知っているもんだ。
なんの反応も示さないわたしに、彼はほんの少しだけ口元に笑みを浮かべて。
「彼女のフリ、続けてよ」
って言ったんだ。