クールな彼のニセ彼女
それがだれなのかと言うと…。
「あ、美保、来たよ町田!」
「ちょ、声がでかいってばミカコ!」
焦って辺りを見渡すと、廊下にはたった今登校してきた女の子が歩いているだけ。
安心したわたしは廊下から窓の外へと目線を移した。
「えっ!?」
視界に“彼”をとらえた次の瞬間、今までにないくらい大きな声が出てしまったわたし。
「美保、どうかした!?」
「ま、町田くんが…」
「??」
「夏服になってる~…!!!」
「なーんだ、そんなこと?」
ちょ、聞きましたかみなさん!!興味なさそうなミカコの声!!
「そんなことじゃないよお!か、かっこいい…っ」
袖から伸びる長い腕が、ここからでも確認できる!
かっこよすぎる…っ!!ビバ衣替え!!
180センチ近くある身長にスラッとした体格。
切れ長の瞳に、掘られたように筋の通った鼻。
豪快に開かれることはない上品な薄い唇。
露知らずのサラサラとなびく黒髪の毛先さえしっかりと見とれてしまう。
「そんなに好きならはやくアタックしなさいってば!!」
「うう…勇気出ないもん」
「もー聞き飽きた意気地無しのセリフは!!片思いして2年2ヶ月…いい加減に勇気出しなよ美保!」