クールな彼のニセ彼女
信号
昨日の会話を思い出す。
「彼女の……ふり?」
「うん」
「………」
待って待って思考がついていかない。彼女のフリ?わたしが?町田くんの?
「もちろん嫌ならいいけど」
「…っほ、本気で言ってるの…?」
なにが起こってるの?相手はわたしが2年2ヶ月片思いしている相手、町田くんで間違いないの?
「本気だよ。あの後輩にバレてストーカー、されたくないし」
「…」
わたしが今ここで断れば…町田くんがあのリナっていう子に付きまとう可能性が出てくる…それはなんとしても阻止したい…!しかも、町田くんの彼女のフリなんて、わたしにはメリットしかない。つまり、ふたりともハッピーというわけだ。町田くんにとっては、ストーカーされるよりはわたしに彼女のフリをしてもらうほうがマシっていう程度だと思うけど…。
「わ、わかった!彼女のフリ、する…!」
こうしてわたしは町田くんのニセ彼女になったのだ。
「“俺と成川の、秘密ね”って……きゃあ~…!!」
家に帰ってからも夢を見てるんじゃないかと思った。
ニセ彼女。本物ではない。言わば、わたしは盾になっているだけ。
「それでもうれしい…っ」
うれしい。ほんとにうれしいっ!
これを期に、町田くんと少しでも仲良くなれますように…。
わたしはそう願いながら眠りについたのだった。