クールな彼のニセ彼女


「ま、町田くん……っ!」


振り向き、驚いて咳き込みそうになった。


「ど、どうしたの……?」


教室で話しかけられるのなんてはじめてで、脳内は混乱しまくり。必死に平常心を保つ。

近くのクラスメイトたちは“あの二人話してる!”みたいな目線を送ってきてすごく恥ずかしい……。


「今日、用事なかったら一緒に帰ろ」


町田くんの口からは、信じられない言葉が。


「……っ!?」


まだニセ彼女としてなにもつとめていないため、いきなりのお誘いに戸惑って上手く言葉が出てこない。自然に振る舞わないといけないのに。


「用事ある?」


今日の放課後は……ミカコと新作のドーナツを食べに行く約束をしている。


「今日はミカコと……」


「美保!町田と一緒に帰りな!!」


ミカコがニヤニヤしながら言った。

どうやら気をきかしてくれたみたい。


「原、ありがと。それじゃ、放課後に」


町田くんはそれだけ言ってお昼を食べる定位置へと戻っていった。

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