炎は水とともに散り行く
時雨は「本当だよ!」と大きくうなずいた。

女神様が、手のひらに炎を灯す。「真実と今を映し出す炎」と時雨が名付けたものだ。炎は、1人の少女の姿を映し出す。

…廊下ですれ違ったことがある。と僕は、その時のことを曖昧に思い出した。

「これが、時雨さんの父の今の姿です」

女神様が言った。この炎は、嘘を付くと弾けて消えるようになっている。前に、女神様がやってくれたことがある。しかし、この炎は弾けることなく揺らめき続けている。

「嘘だろ…」

時雨は「俺も紅蓮と同じような反応をしたよ」と言った。

女神様は炎を消し「頼みましたよ」と微笑んだ。

「分かりました。では、行ってきます」

時雨が頭を下げ、僕を引っ張りながら歩いていく。そして「紅蓮には、あのことを言っておこうと思ってね」と僕を離した。

「…そうか」と僕は、天界を歩き出す。その後を、時雨が追いかけてくる。空は明るくなり、きれいな青空が広がっている。
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