炎は水とともに散り行く
今は『7時30分』。僕らは地上に着き、街を歩いていた。その道に1人の少年が立ち止まっている。僕は髪飾りを付けて、少年に近づく。
「おい、お前」
「…えっと」
少年は、僕と時雨を見ながら不安そうな顔をした。
「俺らは死神だよ」
時雨が微笑みながら、そう言う。
「勝手なこと言うなよ。僕らは死神であり、生きた人間でもあるだろ!」
「あの…どういう意味ですか?」
中学生くらいの少年が、首を傾げた。時雨が「死神は、霊の悩みを聞いて解決するお仕事をしているんだよ」と死神の説明を簡潔にした。
「…死神は、霊が見えない人には見えないんだけどな。霊が死神になるから」と僕が追加して言う。
少年は僕らの話に違和感を覚えたのか、また首を傾げた。
「え…でも、お兄さん達は生きているんですよね?」
「そうだよ」と時雨がうなずく。
「では、なぜお兄さん達は死神に…?」
「俺の名前は、小桜 時雨だよ!こっちは、俺の友達の城川 紅蓮くん!!」
「だから、うるさいと言っているんだ」
「うるさくしてないよ~!!」
時雨が叫ぶ。少年は「うるさいですよ…」と言って耳を塞いでいた。
「あ、ごめん…」
時雨は少年を見て、うつむいた。少年は「ごめんなさい、そう言うつもりじゃ…」と謝っている。
「気にすんなよ、いつもの事だからな。少年、名前は何だ」
「いつもの事なんですね…僕は、桃瀬 春陽(ももせ はるひ)と言います」
「そうか。僕らが死神になった理由はな…」
僕は、初めて死神になってしまった日のことを思い出した。