炎は水とともに散り行く
高校1年生の夏休み、僕は時雨と公園で遊んでいた。
「紅蓮!俺の家で遊ぼうよ!」
「…分かった」
僕は時雨の提案にうなずき、公園を出た。誰かが道端で話し込んでいる。それを見た僕と時雨は、驚いていた。話しているのは、黒いローブを着た女性と白いローブを着た美しい女性。
「そこの2人」と白いローブを着た女性が僕らを見て言う。
「俺らのことですか?」
白いローブを着た女性は「そうです」とうなずいた。黒いローブを着た女性の方は「死神が見えるの…?」と驚いた。
「死神…?」と時雨が首を傾げると、黒いローブを着た女性が説明をしてくれた。
「信じ難い話だな」
僕がため息をつくと、2人は「仕方ありませんよ」と言って微笑んだ。隣にいる時雨は、目を輝かせている。
「女神様、どうしますか?」
黒いローブを着た女性が、白いローブを着た女性を「女神様」と呼んだことで、時雨は、さらに目を輝かせた。時雨は、ファンタジーが好きなのだ。
「…そこの2人、名前は?私の名前は、咲村 結葉(さきむら ゆうは)です」
「俺の名前は、小桜 時雨~!!」
「…僕は、城川 紅蓮」
時雨は頭を下げて自己紹介をし、僕は無表情のままで自己紹介をする。
「…結葉さん。間違いありませんよ」
女神様と呼ばれた女性が、咲村さんにそう言った。僕は、何がだよ!と叫びたくなったが、何かに気づいた時雨が「止めときな」と僕に小声で言った。
その瞬間、僕と時雨の脇を制服を着た1人の少女が通り過ぎる。その少女を見た咲村さんが「彩羽(いろは)…」と呟いた。あの子は、咲村さんの子どもなんだそうだ。
「…それでは」
女神様は、僕と時雨を眩い光で包み込んだ。何だか懐かしい感じがする。僕は、その感覚に違和感を覚えた。