バリトンボイスで囁いて
外に出るとふわっと鼻を掠めるマリンの香り

この香り、、、
バリトンボイス様と同じだ

繋がれたままの手は意識すると熱が上がりそうで
見ないふりをした

「お前なー、嫌ならハッキリ言えよ」
「えっ?」

うそ、、、

なんで?だって、、、声!

ちゃんと返事をしない私に苛立ったように
振り向いた

「聞いてんのか?」
「はっ、はい、き、聞いてますっ」

さっきとはまるで違うこの声は私が恋い焦がれて
やまない、バリトンボイス様その人だった

でも、どうしてさっきまでの声と違うの?

いや、その前に顔見て気付かない私は
一体どこを見ていたのかと自分の目を疑いたくなる

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