バリトンボイスで囁いて
私のトキメク幸せな時間はあっという間で、
駅名を伝えるアナウンスと共にエンドロールが流れる

はぁ、、、

また明日かぁー

しょんぼりと肩を落として改札口を目指して進む

そのせいで未だ慣れないヒールが段差にはまり、
前のめりになってしまった

「あっ、、」

覚悟した身体はまたしても力強い腕で支えられた

「ドジ」

たったそれだけなのに、耳元で囁かれた
バリトンボイスに腰が砕け落ちるんじゃないかと
クラクラしてしまう

「あ、すみませんっ、、、」

バッと勢いよく離れてすぐに謝る

私きっと耳だけじゃない。全部真っ赤だ

なのに、追い討ちをかけるようにすれ違い様に
耳に唇を寄せた

「じゃあな、菜々」

はい、完全にノックアウトです。


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