バリトンボイスで囁いて
二次会終了後、それぞれが手を振り帰路へ

私も駅を目指して歩く
アルコールで赤らんだ頬を風がソワソワと撫でる

焼肉とアルコールの臭いが一人になるとむせ返る
くらい鼻につく

明日、このコート天日干し決定だなー

改札の前まで来ると見覚えのある後ろ姿にハッとした

ひ、弘人さん、、、

腕時計の針は22時半。
こんな時間まで仕事してたの?

上機嫌で食べて飲んで騒いでた自分が恨めしくなった

別に弘人さんからしたら関係ないことだけど、
チクリと真ん中が痛んだ

このタイミングで会いたくはない。

少し時間をずらそうと踵を返した

「菜々?」

なんで?気付くの?
私の後ろ姿だよ?どうして分かるの?

立ち止まったまま石像みたいに動かない私。

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