バリトンボイスで囁いて
全力疾走なんて、いつ振りだろう

しかも、ブーツでなんて。

「はぁ、はぁ、、、」

肩が激しく上下する

私、なにしてんだろう。一人でバカみたい

弘人さん、困ってたよね。

こんなちんちくりんな小娘に好きとか言われても
蚊に刺された程度にしか思われないのに。

間もなくクリニックに着くところで大好きな
バリトンボイスが、私の背中を包んだ

「菜々、何度も逃げるな」

ゆっくりと振り返ると、私とは違って息も乱れて
ない、いつもの凛々しい弘人さんがいた

わざわざ追いかけてきてくれたの?
なんで?

期待しちゃうからそんな優しさいらない

惨めになるだけなのに、、、

< 71 / 119 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop