たとえば君が居なくても。
「文武両道って言葉知ってる?自分の実力くらい把握できてるし、高望みしてないもん。巴ちゃんが通ってる大学一択よ!」
巴ちゃんもまた、近くに住む二つ上のお姉さんで、私が志望している星林(せいりん)大学に通っている。
「なんだ、この間担任に呼び出された時に薦められてた所かと思った。」
確かに先生からは上を目指す事を押されたが、自分のやりたい事ができる場所でないと意味がないと私は思う。
「自分の将来を他人の意見で左右されたくないもん。」
望に夢があるように、私にだって叶えたい事は山ほどあるんだ。
「それより自分の心配はいいの?まさか推薦だけで受かるなんて思ってないよね?」
頭をポリポリ掻く彼は、痛いところを突かれたような顔をしている。
「俺だってちゃんと考えてるって。一応塾にも通う予定だし・・・。」
その反応だと前回のテストは良いとは言い難かったようだ。
「!!・・・この、空のお皿は?」
お皿が隠れるくらいあったクッキーたちは、跡形もなく消えていた。
「見た目と違って美味しかった!ごちそうさまぁ。」
味見もしてないし、何より練習中のものを食べないでほしかった。
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