忘れられないひと【完結】
「ごめん、合コンはやめとく」
そう言いながら優紀のグラスに自分のグラスを当てた
リンと鈴のような音が耳に響いてきた
「紗也!"合コンは"なんて言ってるけどどこに出会いがあるのよ!
この前、なんとか部長の誘いも断ったんでしょ?」
「私の事は良いのよ、優紀は?卓也さんとはどうなの?」
「良くない!紗也!もう一年だよ?
私には聞く権利あるよね?」
「優紀……」
「紗也が辛いのわかってるよ!
でも、私には慰める権利も一緒に泣く権利もない?
そんなに私は頼りない?」
ポロポロと涙が伝ったのがわかった
親友の気持ちが嬉しかった
私よりも先に泣いていた優紀の涙が私を泣かせてくれた
私はあの日から一度も泣けなかったから
優紀はずっとそんな私を何も言わずに見守ってくれていた
私はそんな優しさに甘えていた
"頼りない?"なんて
そんなはずない
今、笑っていられるのは優紀がずっと傍にいてくれてたから
「紗也、今日は紗也の家に泊まりに行っていい?」
涙を拭いながらコクンと頷いた
優紀も涙を拭いながら私の頭をポンと撫でた
「さぁ!じゃあ食べちゃお!帰りにコンビニでお酒買って酒盛りよ!」
わざと明るく言ってくれる彼女にはいつも助けられる
顔を見合わせて二人で笑った
届くかどうかわからない小さな声で呟いた「優紀、ありがとう」の言葉
優紀の手が私の頭を撫でたから、また泣けてきた