忘れられないひと【完結】




「ふふ、貴女には勝てないはずだわ」

「え?」

「山野くんって、あの容姿でしょ?
それに加えて仕事も出来て特定の彼女も遊んでる噂も聞かない
そりゃ社内の女も必死だったのよ
女性とは一線置いてる感じだったし
でもね、ある時から山野くんが醸し出す雰囲気が柔らかくなった時があったの
貴女と付き合い始めていたのね」

「…………」

「みんな何となく気付いて、彼女ができたって噂が流れたわ
でも、山野くんに告白した子が"彼女がいるから"って言われて振られたなんて大騒ぎしたから
はっきりと彼女が出来たのが解ればみんな他の男を狙いはじめてたけど私はみんなの様に諦めきれなかった
同期で入社した時から好きだったから
そんな時に、山野くんのニューヨーク転勤の話が出て、結婚の噂も流れたわ
指輪を買ってる姿を見たって話もあった
結婚してニューヨークに行っちゃう人を追いかける気も無くなって諦めようとした時に彼の送別会も兼ねた同期会があったの
その時に同期から彼女との事聞かれて照れながらもプロポーズするって話を聞いた時悔しくなった
諦めきれなくなったわ
あんまりお酒が強くない山野くんだからいつもは途中からソフトドリンクにするんだけど私はお酒にこっそり変えてたの
段々酔ってきた山野くんはいつもとちがって饒舌で、彼女の話ばっかり
惚ける山野くんが珍しくて同期も調子に乗って聞きたくもないのに貴方の事ばかり聞いてたわ
本当に貴方の事が好きで仕方ないって顔してた
それと同時に嫉妬した
山野くんに愛されてる貴女が羨ましかったわ」


彼女ははーっと大きく息をはいて「あとは貴女が見た時よ」と言った



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